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ビール生産量・消費量の都道府県別の特徴と傾向

下の表は、都道府県別にビール生産量・ビール販売量、人口(15歳以上男女)、一人当たりビール消費量をまとめたものです。

エリア
(管轄国税局)
都道府県ビール生産量(1000リットル)ビール販売量(1000リットル)人口・15歳以上男女(千人)一人当たりビール消費量(リットル)
札 幌
Sapporo
北海道101,476117,5634,57825.68
仙 台
Sendai
青 森13222,5181,06621.12
岩 手1,64521,9211,04321.02
宮 城52,27540,6082,01420.16
秋 田24718,64883122.44
山 形10418,52991720.21
福 島155,44930,4041,57619.29
エリア計209,852152,6287,44720.50
関東信越
Kanto Shinetsu
茨 城390,85440,3312,51216.06
栃 木4,05926,2151,68715.54
群 馬100,58026,8201,69215.85
埼 玉2,23094,2806,50114.50
新 潟4,70240,2231,89921.18
長 野5,30935,3181,77519.90
エリア計507,734263,18716,06616.38
東 京
Tokyo
千 葉185,59285,6975,55415.43
東 京68,546431,75512,57334.34
神奈川106,991153,5908,19818.74
山  梨95713,17370918.58
エリア計362,086684,21527,03425.31
金 沢
Kanazawa
富 山16321,09389923.46
石 川10918,77798119.14
福 井4811,75965617.93
エリア計32051,6292,53620.36
名古屋
Nagoya
岐 阜X25,2501,70714.79
静 岡94,72752,1243,15116.54
愛 知252,078117,2136,55017.90
三 重X23,6131,52815.45
エリア計348,145218,20012,93616.87
大 阪
Osaka
滋 賀39,83514,7381,22412.04
京 都91,56253,8362,26023.82
大 阪265,688184,7707,77923.75
兵 庫82,78186,7704,74118.30
奈 良17015,0681,15113.09
和歌山29413,09079316.51
エリア計480,330368,27217,94820.52
広 島
Hiroshima
鳥 取2468,92347318.86
島 根1309,88157317.24
岡 山41,06724,0041,62714.75
広 島6545,0662,40718.72
山 口30919,7761,15517.12
エリア計41,817107,6506,23517.27
高 松
Takamatsu
徳 島X10,43662216.78
香 川20114,49681817.72
愛 媛26319,7241,14817.18
高 知X13,37059722.40
エリア計59358,0263,18518.22
福 岡
Fukuoka
福 岡250,49784,4534,45918.94
佐 賀X12,17569217.59
長 崎X19,2851,11417.31
エリア計250,511115,9136,26518.50
熊 本
Kumamoto
熊 本19,08725,8921,49017.38
大 分67,65518,12096918.70
宮 崎25219,78391021.74
鹿児島6120,0491,35214.83
エリア計87,05583,8444,72117.76
沖 縄
Okinawa
沖  縄39,66828,0411,23222.76
全国2,429,5872,221,127110,18320.16

データ出所

  • 国税庁:令和5年度 3 間接税「酒税」
  • 表内の「エリア」は管轄国税局
  • 生産量の「X」は生産していないことを表す
  • 政府統計局:第3表 都道府県、年齢(3区分)、男女別人口-総人口(2023年10月1日現在)

都道府県別の特徴と傾向

北海道は生産量・消費量ともに上位、かつ一人当たり消費量も高水準

北海道がビールの生産量・消費量ともに上位であり、一人当たりの消費量も高い背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、北海道を拠点とする大手ビールメーカーの存在により、地域内での生産・流通が盛んで、地元ブランドへの親しみが強いことが挙げられます。また、寒冷な気候の中で、屋内での飲酒文化が根付いていることや、観光地として訪れる人々の飲酒需要も無視できません。さらに、自然豊かな環境の中でのアウトドアやバーベキューなど、ビールが合うライフスタイルも広く浸透しています。地産地消の意識も高く、地元で醸造されたクラフトビールの人気も加わり、総体的な消費量を押し上げていると考えられます。

仙台エリアの一人あたりビール消費量は他エリアと比べて高水準

仙台エリアの一人当たりビール消費量は全国平均を上回っており、高水準に位置しています。北海道も同じような傾向でしたが、寒冷な気候の方がビールを飲まれる傾向にあるように見えます。

都道府県の中でビール生産量が一位は「茨城県」

茨城県が都道府県別ビール生産量で全国1位となっています。この背景には、大手ビールメーカーの大規模な工場が集積していることが大きく影響していることが考えられます。特に、関東平野の広大な土地を活かした工場立地が可能である点、また首都圏に近く物流拠点としても優れている点が、生産拠点として選ばれる要因です。

茨城県内の主要ビール工場(大手)
アサヒビール 茨城工場
キリンビール 取手工場
サッポロビール 那珂工場

さらに、豊富で良質な水資源もビール醸造に適しており、工業団地やインフラの整備も整っていることから、各社の生産体制が集中しています。

ビール消費量の総量・一人当たりビール消費量の一位は「東京」

東京都は、ビールの消費量総量、および一人当たり消費量で全国1位となっています。この背景には、東京が日本最大の都市であり、人口の多さに加え、観光客・ビジネス客・単身者など多様な人々が集まる特性があります。飲食店の数も圧倒的に多く、居酒屋やビアガーデン、レストランなど、ビールを提供する場が至る所に存在します。また、仕事終わりの「一杯」文化が根強く、平日でも一定の需要が見込まれます。さらに、大型イベントやスポーツ観戦、音楽フェスなどの催しが頻繁に行われ、こうした場でもビール消費が促進されます。域外からの流入人口も多いため、実質的な消費人口が増えている点も、消費量を押し上げている大きな要因と考えられます。

ビール生産量が少ない「金沢」エリア

金沢エリアでは、ビールの生産量が非常に少ないです。日本酒文化が非常に根強い地域であり、地元の酒造りが重視され、地域内でのビール生産は主に小規模なクラフトビールにとどまっており、大量生産を担うような設備や体制が整っていない状況と考えられます。地理的に見ても、物流拠点としての優位性や、大規模工場用地の確保が難しい面があり、生産拠点としては選ばれにくく、大規模工場誘致とは距離を置く要因になっていると考えられます。

ビール生産量 全国三位の「愛知」

愛知県が全国で3位のビール生産量を誇る背景には、中京工業地帯の一角としての産業基盤の強さと、交通・物流インフラの整備が挙げられます。特に名古屋市を中心とする都市圏は人口が多く、消費地としても魅力があるため、供給拠点としての役割を担いやすい立地です。また、太平洋ベルト地帯に位置し、関西・中部・関東の中間にあるため、各方面への出荷にも適しています。加えて、用地や水資源も確保しやすく、ビール製造に適した環境が整っています。

愛知県内の主なビール工場(大手)
キリンビール 名古屋工場(清須市)
アサヒビール 名古屋工場(名古屋市南区)
サントリービール 名古屋ビール工場(犬山市)

こうした条件から、大手ビールメーカーが工場を設置しており、大量生産体制を維持できる体制が構築されています。

「京都」は大阪よりも一人当たりビール消費量が多い:日本酒よりもビールが好き?

京都の一人当たりビール消費量は、大阪を上回っています。この差は小さいながらも、京都の独自の文化的背景が影響していると考えられます。京都は観光都市として国内外から多くの来訪者を迎えており、観光地や飲食店での消費が高まる傾向にあります。また、京都には地元の日本酒酒蔵によるビール醸造やクラフトビールの醸造所が点在しており、地域に根差したビール文化が育まれていると考えられます。

ビール生産量の少ない「広島」

広島県は、ビール消費量は多いものの、生産量は日本の中でも非常に少ない状況になっています。瀬戸内の穏やかな気候や海産物を中心とした食文化により、日本酒の需要が強く、伝統的な酒造業が根付いている地域でもあります。こうした地域特性から、ビールの地場生産よりも他県からの供給に依存していると考えられます。近年ではクラフトビールの醸造所が増えていますので、数年後には変わる可能性があります。

ビール生産量の少ない「高松」エリア

高松エリアのビール生産量は、全国的にも非常に少ない水準にとどまっています。主な要因としては、大手ビールメーカーの大規模工場がエリア内に存在せず、地域での大量生産体制が整っていないことが挙げられます。さらに、四国全体で見ると、酒類消費においては焼酎や地酒の比率も高く、ビール需要がやや抑制されてきた文化的背景も考えられます。その中で、高知の一人当たりビール消費量は、エリア内で最も高く、お酒好きな県民性が現れているようにも見えます。

ビール生産量の多い「福岡」

福岡県は九州最大の都市圏を有し、ビールの生産量も全国上位に位置しています。これは、地理的・経済的な条件が揃っていることが考えられます。まず、九州の物流・経済の中心である福岡市を擁しており、九州全域や西日本への出荷拠点として優れた立地を誇ります。また、人口規模が大きく消費地としての需要も高いため、供給と需要のバランスが取りやすい環境が整っています。さらに、良質な水資源が確保しやすく、製造に適した自然条件も魅力です。福岡は焼酎文化も根強い一方で、都市部を中心にビール需要が安定しており、メーカーにとっても安定した生産拠点として位置づけられていると考えられます。

福岡県内の主なビール工場(大手)
アサヒビール 博多工場(福岡市博多区)
キリンビール 福岡工場(朝倉市)

一人当たりビール生産量が多い「宮崎」と少ない「熊本」

宮崎県は一人当たりビール消費量が全国平均を上回る一方、熊本県は比較的低めです。この違いには、地域ごとの酒文化とライフスタイルの違いが影響していると考えられます。宮崎は温暖な気候や開放的な風土もあって屋外での飲酒機会が多く、地元食材との相性からビールが好まれる傾向があります。観光地としての性格も強く、観光客による消費も寄与しています。一方、熊本は焼酎文化が根強く、家庭や飲食店でも焼酎の消費が主流であるため、ビールのシェアが相対的に低くなりがちです。また、熊本地震以降の飲食業回復の影響も一部考えられます。両県とも農業・畜産が盛んな地域ですが、食文化や嗜好の違いが消費量に反映されていると言えるでしょう。

ビール消費量よりも生産量が多い「沖縄」

沖縄県ではビールの生産量が消費量を大きく上回っており、地元消費を超える規模で生産が行われています。この背景には、県内にある「オリオンビール」の存在が大きく関与していると考えられます。オリオンビールは沖縄を代表する地ビールメーカーであり、県内需要にとどまらず、全国等への出荷も行っています。また、沖縄は観光地として年間を通して多くの来訪者を迎えており、観光客向けの消費も大きな比重を占めますが、それ以上に県外市場を視野に入れた商品展開が、全国的に受け入れられ、沖縄発のブランドとしての強みがビール生産を後押ししていると考えれます。